『シャンブル』全曲レビュー … 10) BLACKTIGER

  • 作詞作曲川西幸一。「EBI様に男くさい歌詞を歌わせて違和感を楽しみましょう」という『黒い炎』を思い出す曲で、しかし『黒い炎』より……ああもういいか、そういう論調は。
  • そこで視点を変えて、ユニコーンにおけるボーカル外注制度のようなものについて考えてみる。本曲の作者は、ボーカルにクールで無機質な感じがほしくてEBI様にオファーしたとのこと。たしかに奥田さんが歌うこの曲は想像できない。いやちょっと想像してみたけど「もちけつ」と言いたくなりそう。よっちゃん(注:阿部)は意外に悪くないかも? あの人は「もちけつ」と言われるとこまで含めて芸風だから……
  • 話がそれた。つまりそうやってユニコーンでは、自分の曲を他のメンバーに歌わせることがしばしば行われる。といってもそれは、前曲のようにEBI様が奥田さんに歌わせるのだったり、本曲のように川西さんがEBI様に依頼するのだったりで、逆のベクトルはまあ、ないわけだよ。そこに彼らのプロ意識を見るというか、「なんでもあり」といっても「クオリティがより高くなる場合においてのみ」という、シビアな目を感じるのですね。
  • じゃあ奥田と阿部のホーンセクションはどうなるんだという話になりますが、あれはクオリティを低くしてるんではなくて「雑味」という味を加えてるんですね。えーと……たぶん。
  • 奥田民生が兵庫慎司いわく「このバンドでは他の人よりちょっと多く曲を書いて、ちょっと多く歌っているだけの人に見える」のなんかも、むしろこの明確な選定基準によるのかなと思ったりする。カリスマとか人気がどうとかじゃなく、「このなかでは一番歌が上手くて、雰囲気も合ってるからじゃあおまえ歌え」という、大変プラグマティックな基準で話が決まるという。それは歌に限った仕組みではなく、たいていのパートにおいて「本業」とするメンバーがいる。
  • それだけだとちょっと殺風景なのだけども、本業を明確に分担する一方で「だからそれ以外は遊んだっていいじゃん」とばかりに雑味を混ぜるのが小面憎いねっと思うわけです。混ぜるっていうか『キミトデカケタ』なんて丸ごと(自粛
  • そんな隠し味のひとつとして本曲にまたも登場する「犬声」。一枚のアルバムに2回もクレジットされたら、もうレギュラーなパートとして認めたほうがいいんじゃないか「犬声」。
  • あまりに純粋なあの声を聞いていると、アタシだんだん自信がなくなってくるのよ。東関道のグレイの闇を颯爽と駆け抜けていったのは、スポーツカーじゃなかったんじゃないかしらって。あれは白い、耳のぴんと立った、短毛種の……