『シャンブル』全曲レビュー … 02) スカイハイ

  • 同じ人のボーカルが続く。しかし局長は、あら別腹の変換が(笑)曲調はがらっと変わって、それもそのはず今度は作詞作曲とも奥田民生。ああ、奥田民生だねと納得の詞と曲で、これが1曲目だったら普通にソロアルバムが始まるようにも聞こえそう。
  • が、これはもう単に思い込みかもしれないんだけども。音を聴いていくと、ソロの奥田とはどうも何かが違う。ようにも思う。気がする。
  • なんでそうくどくどと及び腰か。解散後のアルバム、私は『29』『30』は少し悲しい気がして、『FAILBOX』はかなり好きで、『股旅』『GOLDBLEND』はあんまりぴんとこなくて、『E』には直撃を食らって、そのなかでも『CUSTOM』にはもう、奥田すげえ、奥田さんもここまで来たか、と涙して、それでなんか気が済んじゃって足が遠のいたという失礼な人間である。たぶん世界には私よりよっぽど奥田民生に詳しい人が5万人くらいいるので(そんなにはおらんか)すいません僭越で、みたいな前置きがどうしても外せない。でも言っちゃう。
  • 『29』『30』が悲しいというのは別に、私がバンドが恋しくて悲しかったのではない。前のエントリーを読めば私がそういう姿勢でなかったのはおわかりいただけるかと思うのだが、一方ソロデビューCDのなかの奥田さんは、豪華なゲストミュージシャンのかっちょいい演奏に囲まれて、なんか非常に「ぽつねん」としていた。
  • いや、まあ私にはそう聞こえた、というだけの話でね(どこまでも及び腰)。でも当時インタビューでも本人「ひとりでスタジオにポツンといるのは、こんなに寂しいものかと思いました」って言ってたしね。それがどうも冗談に聞こえないくらい、豪華な他人の邸宅にひとつだけ自前のポータブル椅子を置いて座ってるみたいだったのだ。バンドから離れた奥田さんの声は。自分のアルバムなのに。あのー、私には。
  • ああでもシングルの『コーヒー』なんかは、ちゃんと本人で空間が埋まっていたけど。あとバンド時代にソロ名義で出した『休日』が私は実はとても好きなのだが、ああいう「ひとりだけど幸せ」的コンセプトの歌だと自分を放出しやすいのかしら。
  • まあ結局、月日とともに本人成分はまんべんなく濃くなっていって、『E』ともなればすでに磐石だ。すみずみまで「奥田民生」が鳴り渡っている。そこまでにどれほどのエネルギーが必要だったことかと、「響け」「届け」と(彼にしては)真っ向から思いを歌い上げている『CUSTOM』にしみじみした私なのである。(で、気が済んjy)
  • そしてこの『スカイハイ』。一人でももう空間を埋め尽くすことができる男のもとに、バンドが帰ってきた。ら。男はあっというまに、嬉々として、バンドの音のなかに寝転んで「あーーーラクだ」と姿を消してしまうのであった。
  • いやほんとに、私にはそう聞こえるというだけの話なんですけどね。本曲もまぎれもなく奥田サウンドではあるのだが、勝手知ったるドラムが、ベースが、コーラスが、サウンドの主をとても甘やかしている、感じがする。甘やかされたボーカルがすっごく嬉しそうに歌っている。気がする。
  • 少なくとも最近のDVDでTVで、あの坊主の人がやたら緩んだ笑顔をさらしているのだけは、私の思い込みではないのである。