第49回 愛しき友よ

  • 局長が喋っていた記憶がほとんどない。有馬の説得を退けた場面を最後に、彼はずっと目だけで語る人になった気がする。「(コルクを)持っていてはいけませんか」とか「髭をあたってください」とか、ああ捨助への「新選組の名を騙るとは!」もあったけど、どれも心情がそのまま出たというより、分別や安らぎや思いやりに濾紙のように漉された言葉だ。覚悟を決めたとはそういうことなのかな。それとも、そのままの心情を聞ける人がそばに誰もいなくなったからなのかな。
  • そんななかで、最後に局長のそばに来てくれたのが左之助でよかった。本当によかった。先週のラストシーンを作るために一年かけて加納のキャラクターが用意されたのでは、とよく言われているけれど、同じく今日のこの場面を作るためにあの左之助が生まれたのかもしれない、と思う。
  • 最後まで破天荒な彼の退場のあと、初めて破顔した尾形にもやられた。馴染めない人とか言われていたが、こんな顔で笑う人だったんだ。この人にとって新選組ってのは笑っていやすい場所じゃなかったんだろうな。だからって組を好きじゃないわけじゃないんだよな。島田じゃあ、そこんとこ複雑すぎてわからないんだよなきっと。
  • 捨助をとっちめるおふでさん、すっかり芸者の地が出てしまっていて愛しかった。
  • 新選組滝本捨助!」名乗って斬り込んで、敵に討たれる。なんだよ、いちばん侍っぽく散ったのは捨助じゃねえか。いいとこ持っていきやがって。おまけに燃えよむにゃむにゃの土方のお株を取ってないかとか思ったのは内緒だ。
  • 刑場ってその日に設営するもんなんだ。自然の中に一種の劇場空間ができていくさまは、わくわくというと語弊があるがなんだか気分が高揚するものがあった。どうもこういう、分刻み秒刻みでの社会の広がりはほんとに上手く見せてくれたんだけどなー。うーん。まあよし。
  • 局長に呼応するように、今日の土方も心情を言葉にしては語らなかった。揺らいだのは兄の家でだけだった。この場面はだからもう少し長くほしかったなあ。兄上の謡まで詰め込むならなおさら。あと、せっかくの色男なんだからラストはもう少しいい顔で止めてやれよと思ったのは内緒だ。
  • おこうちゃんを何も殺さなくても…とブルーになってみたり。脚本家、なにか沖田に恨みでも?と見当違いに七五調で勘ぐってみたり。もしくは裏返しの愛情?
  • 新米人間(もと犬)斎藤、主君の命を受けて京を目指す。虎撤(ここに本物が!)は背負ったままか。使わないのか。それの順番はまだ、自分には回ってきてないと思ってるな。新選組はともかく、こいつのドラマはまだ終ってない。