『シャンブル』全曲レビュー … 04) ボルボレロ

  • ここに来て、メンバーが一人づつ自作の曲でボーカルをとる「顔見世興行」的シリーズが前曲から始まってることに気づく。そしてさらにいま気づいたが、順番はたぶん単に五十音順だ。周到なんだか適当なんだかわからないところが持ち味です。ということで、堀内一史ことEBI様作詞作曲『ボルボレロ』。
  • なんで突然様付けか。それは彼が私の王子様だから……ではなく、でもこの人はとりあえずなんかの王子様だなあと思うからだ。「様」まで入れて固有名詞にしたい感じ。デーモン小暮が「閣下」まで入れて固有名詞なのと同じあれで。(しかも「こと」の使い方逆だし)
  • そんなEBI様の歌声をひさびさに、これはほんと10年以上ぶりに聴いた。「ああー変わってないねー」と懐かしんだのがまず半分。
  • そう、この曲でやっと「懐かしい」という感慨が湧いたような。ユニコーンのアルバムといえば合間にはさまる、EBI様の超音波伸びる高音がお約束。曲もまた美しくけだるく、微笑みながら自宅全焼みたいなヨーロピアンセンスが健在である(←おまえは絶対何かヨーロピアンをはき違えている)。そして思う残りの半分は、「でも『ペーター』や『フーガ』よりこの曲のほうが好きだな」というものであった。
  • メロディだけの話ではない。そういえばピアノが光るあたり『8月の』もほうふつとするが、あれは私のEBI様ベスト一二を争う名曲なんだけど、もしかしてそれより好きかもしれない。大きな要素は、たぶん声にある。
  • 高音の伸びは相変わらず見事ながら、この人はこの人なりに、声に年輪が出てきたというのか。ハイトーンフェチにとってはもしかしたら残念な「濁り」なのかもしれないけど、さながらワインが時を経てまろやかに熟成するかのごとく(←精一杯ヨーロピアンを意識)一音のなかにいろんな響きの聞こえる声になってきた気がする。聴いていてとても、気持ちいい。
  • あとDVDで、歌について「ぼくはピッチもリズムも悪いのでー…」と照れくさそうに、しかし明るく笑い飛ばしていたのをおやっと思った。こんなに率直におのが弱点を語る人だっただろうかと。
  • 歌は心なのですね。さながらワインが(略)