第9回 すべてはこの手紙

  • 香取慎吾の初撮影が今回の佐久間象山勝海舟とのシーンだと聞いていたので、そこをまず覚悟しなければと思っていた。実際見てみたら、例の発声前のタコチュウみたいな溜めは目立ったものの、それほどの違和感はなくて安心。やや緊張気味だったのも、偉い人に会うという状況設定に合っていたかも。
  • 筋自体は予告のときから面白くなりそうだと思っていた。期待は大当たり。
  • 空気読めない発言がチャームポイントの山南さん。どうしてそこまで勇を買って神輿を担ごうとするのかわからないが、ともかく今回ついに一本釣りに成功。先週はどう見ても怪しい勧誘の人みたいだったからね…。本人に悪気のないとこ含めて。
  • 予告を見たときは、勇が「俺にはもう道がない」と言う相手はつねかと思った。実際は歳三にだったのね。やっぱり、どんなに打ち解けていても妻には言えないことがある、長年の友人にしか言えないことがあるよねと納得。この時代ならなおさらだろう。
  • その言葉を言うときの姿勢も百姓丸出しのだらしなさで、おそらく歳三以外の誰にもこんな格好は見せないし、こんな言葉は言わないだろうと画面で判らせるものがあった。「駄目男の吹き溜まり」これまた言うねえ。その認識があればこそこの先リーダーが務まるんだろうな、と思ってみたりする。
  • 吹き溜まりと言われて、口の端で笑うだけの歳三。たぶん自分でも、いい年して何をやっているのかと自問する一日だったんだろう。左之助が「俺一生このままなのかなあ」と言い放ったとき、背を向けたままその言葉を言った当人よりも噛み締めていた。このシーンは演出の大勝利。もちろん山本耕史の演技力にも拠るところ。
  • 聞かせられない弱音はそれとして、つねに語る勇の顔だって良かった。偉い人に会ったことはわかるけれど、どう偉かったのかは自分では説明できない。その寂しさを率直に表情に表せる旦那様、妻にしてみりゃそりゃあ愛しいだろう。作るよふわふわ卵ぐらい、どんぶりに何杯でも。
  • 「渡さない」と呟くおつねちゃん。たぶん「手紙を」と「難しい世界に愛する夫を」のダブルミーニング。でも、見つかってしまったら夫を送り出すしかないのは武家の女だからだね。
  • 京に行ってしまうのはまだ少し先だけど、喜びいさんで出ていく夫の背中を見送ったこの夜、つねにとっては別離が始まっていたんだろうなとちょっと泣けた。
  • 夜道をひた走る勇。武士は走っちゃいけないんだって。(って戦のときはどうすんだ? 江戸時代ならではの教えか?)そんなのお構いなしで走る走る。山南の高揚した言葉が被さる。未来がばあっと開けた。そっち行っちゃ駄目だ!と当の未来から一言言いたくなるけれど、開けちゃったんだからもうしょうがないのだ。
  • 石坂象山と野田海舟。うさんくささも含めて素晴らしく「日本で一番進んだ人々」に見えた。講武所の件で勇に(彼らなりに)同情する姿は、ほとんど中国の神話の仙人が人間に情けをかけているようだった。
  • そういえばコルクを跳ね飛ばされて「何すんだ!」と怒る勇も百姓に戻ってたな。でもあのときだけ、仙人たちと同じ土俵に立てていた。
  • 上司にはそつなく応対し、近藤へは淡々と現実を説く佐々木只三郎。企業戦士の鑑のような人。これからの活躍が楽しみだ。
  • 半日近藤先生と行動を共にしたのに、茶屋に入るまで一言か二言くらいしか喋る隙を与えられなかった平助グッジョブ。
  • と、まあこんな感じで、主に『新選組!』について毎週感じたことを書いていけたらと思っています。できれば過去の分も埋められればいいのですが。