第4回 天地ひっくり返る

  • 素人が脚本・演出にけちをつける、のは視聴者の摂理として当然としても、代替案を出して元の脚本・演出より優れていることはあんまりない。わかっているが、つい言いたい。今回の桜田門外の変、もっと広がりのある見せ方ができたんではなかろうか。
  • 試衛館のあった市谷から桜田門までは、現代人でも歩ける距離だ。近藤勇が変事の現場を見にいった史実があってもおかしくはない、気がする。とりあえず、佐久間象山のお供で黒船を見にいくよりは自然な話だ。そんな、せっかくの(まだ)無名の庶民と歴史的一大事が交差する機会なのに、すぐそこで天地がひっくり返った!という臨場感には、ちと欠けていたように思えて、歯痒い。
  • 勇が自宅で報せを聞いた次の場面がもう桜田門ていうのが、まず寂しいんだな。家を出て現場に走る途中の景色があったら、少し違ったんじゃないのかな。当然、めざましテレビのある時代でもなし、普段と変わらない朝を迎えている家は多いだろう。血相変えて走る若先生を怪訝な顔で見送る人もいたりして。でもその若先生より凄い形相で走るお役人に追い越されたりもして。現場が近くなってくるとだんだん野次馬も増えてきて、人垣をかきわけて開けた視界の中、まず見えたのは雪の上に血のついた陣笠…とかさ。ベタか。しかし天地がひっくり返るんなら、そのくらいベタに盛り上げてもやりすぎってこたないと思うんだがな。
  • 大老を襲撃した浪士たちの中には、その後死にきれず通行人に介錯を願った者もいたと聞く。これなんか、事件の強烈さを窺わせる一方、襲撃者の人間臭さも伝えるエピソードで、使えるんじゃないかと感じたんだが。直接出しちゃうとやりすぎっぽいので、介錯を頼まれた町人があとから怯えつつ興奮しつつ状況を語るのを、若先生が小耳に挟むとかさ。特別な人間じゃない、普通の若者が歴史を動かしたんだって印象が、より強くなるんじゃないかなー駄目かなー(おそるおそる)
  • とだらだら語ってしまうのは、庶民が大事件に立ち会うというシチュエーションがなまじ好きなせいですね。さきほど「より無茶」という意味づけで引き合いに出した黒船見物だが、これは見せ方が良かったから有りなのだ、私としては。