第2回 多摩の誇りとは

  • この回でこの一年この大河につきあうことを決めた。
  • 実戦向きの剣法を教えていながら、人を斬ることは遠い世界のしわざでしかない24歳の近藤勇さん。「盗賊を懲らしめる」なんて民話みたいなボキャブラリーで生きている貧乏道場の若先生。その人の存在が、この回でやけにリアルに見えた。この先それは、ときにはぼやけて「演技する香取慎吾」が透けてしまったりするかもしれないが、上手くすれば一年かけて奥の深い成長を遂げるだろう。
  • 具体的に言えば、おにぎりを頬張るおみっちゃんをいかにも好もしげに見つめる視線とか。「さあ続けますよ」と、言葉は丁寧だが先生らしく毅然と張った声とか。捨助の腰抜けぶりを咎める一本気な振舞いとか。
  • そして盗賊を斬ったあの顔だ。明るい好青年が一瞬で吹き飛んで獣の顔になった。
  • 「自分の身を守るため」でなく「自分の身内を守るため」に人を殺めるあたり、よりぎりぎりの選択に思えるわけで。ここで腐女子の皆さんは「歳さんを助けるために斬ったのね、ラブラブね!」と喜んだりするんだろうが、ちっちっ、わかってねえな。色恋が絡んだ相手の身じゃ「自分の身」に限りなく近いじゃないか。それを守るのに迷いはあんまり要らないじゃないか。もっと範囲の広い「自分の属する世界(を代表して歳三)」と「自分の幼い道徳」とを秤にかけさせられて一転、獣に変わるほうがずっと、ずーっとエロいだろ。どうなんだ、ええ。
  • 文体が酒乱になってしまったので段落を変える。とにかく、あんな顔のできる若先生の行く末を見届けたい気になった。待ち受ける時代を考えれば、彼はこの先いくつもぎりぎりの選択を迫られて、新しい表情を見せてくれるはずだ。
  • 返り血の臭いを洗い落とそうとする勇。ネット上の指摘で初めて気づいたのだが、7年後の京都でも御用改めのあとに手を洗ってたんだね。佇まいはすっかり局長然としていたのに。エロいな…
  • そんなにエロいのが大事か?と問われれば、エロ即ち日常の破れ目と思えばこそ、と怪しい古文調で答える。エロティックとドラマティックは、個人的にはほとんど同義語だ。
  • 山本耕史土方歳三はやっぱり間違いなくいい。姿のいいのももちろんだが、斜に構えたがる部分と、現実主義な部分がみごとな按配で共存している。それから「俺はこれ(薬屋)で身を立てる」と言ったそばからにじむ、字面と裏腹な迷いとか。演技の巧拙と台詞回しの上手い下手は必ずしも同一の能力ではないと私は思っているのだが、どっちもいけるに越したことはないわけで、この人はほんとに逸材だなー。
  • 現実主義といえば脚本のキャラ立ても抜かりなくて、場の雰囲気が停滞しかけたときに、必ず「いま何が問題か」「これからどうすべきか」を口にして先へ進もうとするのが土方。二枚目でなくたってそういう人物が大好きな私にとって、盆と正月が一緒に来たようなキャラクターだ。←やや例えが的外れ。
  • いや、どっちかというと二枚目は苦手なたちなくらいだが、山本土方は放っとけないでしょう。なんつっても月代。あれほど「時代劇のお約束」としてではなく、普通にいい男として認識できる月代にはお目にかかったことがなかった。いっそ半年くらい月代でいてくれればいいのに。総髪も悪くないが、色気がちょっと目減りする(何を真顔で論じてるんだか)
  • 月代といえば香取慎吾の月代も絶品と思う。香取の有為転変尽きせぬヘアスタイル史上、ガルマ様(古っ)風マッシュルームの次くらいに美しいと思っているのだが、感性に問題があるだろうか。大河どころかもういっそ、いいとももスマスマも月代で!袴に二本差しで! と一片の誇張もなしに切望できる私である。
  • 永倉新八19歳、素敵すぎ。ええ声にうっとり。