つーわけで今日は

  • 見てきたのである「南極料理人」。以下ネタバレ、のわりに話はきっとさっぱり見えない。
  • 前評判どおり確かに「何も起きない映画」であったのだが、でも、何も「起こさない」ことは何かを「起こしてしまう」よりずっとたいしたもんだ、と語るような映画でもあった。
  • 平均気温マイナス50℃で、電気も水も自給自足で、1年間接する生き物といえば自分を含む8人の人間だけ(しかも全員男)という状況では、何かまずいことが「起きてしまう」ほうがずっと簡単じゃなかろうかと思うのだ。何事もなく生きていくには、通常の人間生息地よりずっと「何事もなく生きていくぞ!」という自覚が必要なんじゃないか、と、白い白い大地を見ていて思ったのだった。
  • 現に何も起きないと言ったって、細かいいろんなことはもちろんこの映画でも起きる。極限状況が登場人物それぞれにちょっとずつダメージを与えるんだけれども、ダメージの表れ方がそのまま個性とも言えるのが、無責任な観客としては無責任に楽しくもある。
  • シンプルに極限状況に気が滅入っていたり(主任)物理的にも精神的にも若さのやり場がなかったり(兄やん)遠く離れた家族と齟齬があったり(本さん)近くの同僚と軋轢があったり(平さん)人間関係に問題はないけど深刻なラーメン依存症だったり(タイチョー)これといって問題はない…ように見えたのに、気がついたら冷蔵庫の前にしゃがんでバター丸かじりしてるって一番こええよ(盆)!だったり。
  • そんな極限状況のみんなを、毎日の食に彩りを添えることで静かに支えている西村。さえもが、ちょっとした事件でぷつっと切れて不貞寝したわけだが、そんななかで実は唯一ダメージを(少なくとも表立っては)受けてないのが一見ちゃらんぽらんなドクターで、「さすが医者」と変な感心をした。「さすがバーテンダー」ともいうか。