第34回 寺田屋大騒動

  • 山南さんのテロップが(回想)じゃないよ! 撮り下ろし場面だよ!
  • そしてそれは切腹に立ち会えなかった平助の語りで、あのときいなかった人がそうして泣いてくれたことで、見ているこちらの一週間の喪も明ける作りになっているのだった。こういう言い方はやや軽薄と思うけれども、上手いよなあ、まったく。
  • そして今日の本題は妻妾問題を巡る大騒動。喜劇にはなっていたけど、これはこれでシリアスな問題だ。まあでも、直接会っといてよかったんじゃないですかね。手紙で済ませたかったってのがいかにも夫の発想だけど、妻にしてみれば女の顔もわからずに、身請けの事実だけ知らされるほうがよほど辛かろう。京の二人に対する嫌な想像ばっかり膨らんじゃうと思う。
  • ただ一面では、おつねちゃんは言葉にしておゆきを認めちゃったことで、あれ以上の恨みを言えなくなっちゃったともいえる。もともとそういうのは腹に収めてしまうたちでもあるだろうが。結果的に一番楽をしたのは勇さんじゃないのかなー。本人は心外だろうけど、ずるい奴だなー。
  • でもはっきり、おつねちゃんに「あの人があなたを身請けしたのはあなたをいとしく思ったから。それ以外は全部方便」と喝破してもらえたのはよかった。「(妾とか)そういうのじゃない」と言い張ってるのはあくまで勇さんの言い訳で、作品世界でそれが真実なわけじゃないと保証されたから。そんなとこまで美談化されたらたまらんもんなあ。おつねはおつね、おゆきはおゆきで本気で好きになっちゃってこそあの人だろう。
  • そして以前から「京にも支えてくれる人がいないと近藤さんがかわいそうだ」と言っている私だが、考えてみれば勇さんならそれで通る世の中でも、江戸でやっぱり一人で頑張っているおつねちゃんが他の男に支えを見出したら、それは「姦婦」とかってことになっちゃうんだよね…。昔ってやっぱり不公平。
  • 不公平はおゆきの側にも降りかかってるわけで、たとえてみれば、ヘッドハンティングされて転職してみたら、東京の本社から自分の仕事と同じ担当の者がやってきて、「京都での事業展開は一時的なものだ。最終的には本社に吸収するからそのつもりで」と言われたようなものだろう。こっちは一生の職のつもりで移ったのに、そんなんありかよ…と賢いおゆきはまあ言わないわけだが。
  • あそこで「こうなった以上、先生のおそばにはいられません」と言わざるを得ないのが支店の人間(違)の悲しいところだなと。まあ接客のプロであるおゆきのことだから、おつねがああ受けるのを見越して譲ってみせたんじゃないかとも思うが。
  • せっかくの喜劇仕立てなんだから、喜劇の名演も挙げておかないとな。まずは沖田の「姉上ーーー!」の絶望的な響き。土方の不敵な笑い……が凄絶であればあるほど台無しの鼻血。みっちゃんにチクったあとの桂さんのいやーな笑い。
  • どれも捨てがたいが、本日の喜劇大賞は斎藤にあげないわけにはいかない。わんわんがストレスで紐をかじっていますよ!